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私は古くひなびた民芸品に魅せられて木工の世界に飛び込みました。人の手によって使い込まれていく過程において、時間と共にますます美しくなっていく木工品には、なにものにもかえがたい暖かみすら感じられます。そんな木工品を次の世代へ橋渡しできるような仕事がしたい、という思いからでした。

人々の生活や想いが染み込んだ木工品を修理・修復するにあたり、先代の作り手に敬意を払い、できる限りオリジナルの状態を回復させます。そこには倫理的な修復方法と日常的使用に耐えうる強度も計算に入れます。

昔ながらの製作技術を基にした手仕事に誇りを持っています。継ぎ手加工・削り・彫り・仕上げは手道具を使って行います。手入れの行き届いた道具は手の延長となって働き、木の性質・美しさを最大限に生かす仕事につながります。

木工の最終目標は木という素材を生かし、私たちの生活の中での伴侶となるものを作ることにあります。モノ作りには職人のいい仕事が素直に表れます。東洋・西洋の培われた知識と技術を共に取り込んだ「いい仕事」を目指して木工をしています。

竹重健太

修復士・家具職人・漆芸家
1978年
大阪に生まれる
2001年
関西大学文学部卒業
2003年
長野県上松技術専門校木工科卒業
大学卒業後に木工を学ぶため、長野県木曽にある上松技専木工科に入学しました。木工品を修復するために、製作技術を習得するのが目的でした。
2003 - 04年
木地師・古瀬龍哉氏に師事
2004 - 06年
青年海外協力隊・木工隊員としてボツワナに赴任
2006 - 07年
アントワープ芸術アカデミー保存修復科
2008年
Axel Vervoordt にて家具修復職人
2008 - 10年
アートプロジェクト"SHÔ"参加
2010 - 13年
工房 Jean Christiaens にて家具修復職人
2013 - 15年
ピュールス楽器製作学校ヴァイオリン製作科
2018年
ラ・カンブル国立芸術大学美術保存修復科 非常勤講師
2019年
工房 Kenta Takeshige 設立
2020年
ゲント芸術アカデミー・リサーチプロジェクト "RELATIONAL DESIGN" 参加
2021年
アントワープ芸術アカデミー保存修復科 非常勤講師
2021年
漆ネットワーク「Guild LacArt」設立
2022年
漆芸家・大西長利氏に漆芸を学ぶ
2023年
金沢美術工芸大学・漆芸科に学ぶ(金沢-ゲント姉妹都市交換留学)
私はただ古いものが好きだ、というわけではありません。今のままでは消えていく、残していかなくてはならない文化物・技術を、一人でも多くの人に伝えたいと思うのです。

仕上げ

フレンチポリッシュ

火山鉱物を細かく砕いた軽石粉を木目に埋め、目止めにします。ラック介殻虫の分泌物から得られる天然樹脂(シェラック)を純度の高いアルコールで溶かし、タンポンで薄塗りを何度も繰り返します。シェラック・アルコール・油のバランスを絶妙に調整することが極め手となります。

摺り漆

生漆を何度も摺り込み、拭き上げる漆技法の1つです。生漆を摺り込み、磨きを繰り返すことで艶と色があがってきます。漆ほど自然と木工品になじみとけ込む仕上げ方法はありません。


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その他、蜜蝋仕上げ・オイル仕上げも承ります。

道具

かんな

かんなほど奥の深い木工道具はありません。この道具を上手く使いこなすことが木工の醍醐味の1つかもしれません。洋かんなと和かんなにはそれぞれの違いはありますが、どちらも1つ1つにクセがあり、個性溢れます。私はこのどちらもすばらしいと思いますが、強いて言えば、洋かんなは機能的であって、和かんなは有機的であります。

のみ

平のみから丸のみ、彫刻用のみがあります。さらに玄翁・木槌で打つものと、押し切りするものがあります。のみはその身幅もRの形も大事です。彫刻のみを駆使すれば、たいていのモールディングの型はコピーできます。かんなが当たらない場所など、のみに助けられることがあります。組み手製作はのみの独擅場です。

のこ & ナイフ

のこぎりはかんな・のみと合わせて三種の神器です。のこぎりだけは、私は日本のものだけを使います。切れ・繊細さがまったく違うからです。のこ引き墨を一発できめ、のみでの逃げ墨修正には時間を取らない上手な仕事は、まさに職人技です。

小刀・ナイフはRの切り出し、象嵌溝の掘り込み、ベニヤの切断などに使います。