共生‐漆を媒体にした移民対話‐

テーマ:移民、工芸と社会問題の融合

作品概要
このプロジェクトは、社会構造を象徴するキャビネットを通して移民というテーマを探求します。それぞれの引き出しには独自の物語が込められており、中には周囲に溶け込むものもあれば、際立つものもあり、多様な人間性を垣間見せてくれます。圧力によって割れを生ずる漆は、アイデンティティと適応の間の緊張感を映し出します。9人の移民がキーワードを提供し、それぞれの経験を視覚言語へと昇華させました。10個目の引き出しの内側は、鏡のような役割を持つ呂色塗りで仕上げられており、鑑賞者が表面に映る自身の姿を移民対話に重ね合わせるよう促します。
17世紀に栄えたアントワープ・ラッカーキャビネットを漆で模倣し、「アントワープ漆器」を制作するという構想は、シルクロードの歴史を逆行します。東洋の漆芸とアントワープ・ラッカー工芸の伝統を融合させることで、この作品は歴史的な文化の流れを逆転させ、時間と地理を超越し、漆の詩的な物質性を通して、帰属意識と文化交流を再考します。

作品技術解説
木材の反りを考慮しながら木曽ヒノキ材を徐々に削り、所望の厚さに仕上げました。接合部は、各部材の伸縮方向が同じ方向になるように設計されています。木地には本堅地が施され、乾漆彫刻は発泡スチロールの芯材を複数の麻布で包みました。アントワープ・ラッカーキャビネットの伝統を反映したスカリオラ技法は、漆絵を通して再解釈されました。9回のインタビューで各参加者からキーワードを抽出し、それを視覚言語に翻訳しました。これらのキーワードを引き出しの前面パネルのイメージと織り交ぜることで、インタビューを受けた人々はデザインに積極的に参加し、対話、素材の加工、そして視覚表現が融合しました。

 9つのキーワード➝イメージ:
  - 西洋と東洋の漆芸 ➝ 交流
  - 感謝 ➝ 人間性の融合
  - 家族の発見 ➝ 出会い
  - 匿名性 ➝ 多様性
  - 故郷 ➝ 祖国への夢
  - 混合 ➝ 調和
  - 言語、仕事、夢 ➝ バベルの塔
  - 社会的交流 ➝ るつぼ
  - ハードジャンクション ➝ 金継ぎ

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Jolités von België

日本の伝統工芸である漆芸の究極の秘儀は「よく練り合わせる」ことにあります。漆とベルギーを混ぜ合わせることで、漆芸における東洋(日本)と西洋(ベルギー)の融合・変化を試みます。
ベルギーの地方を訪れ、それぞれの土地から原材料および各地を代表するランドマーク、歴史的背景を収集しました。訪れた場所の作家・デザイナー・学芸員などからも関連情報を入手しました。アジア産の漆にベルギー国内の地域性ある原材料を混ぜ合わせ、さらに各地のランドマークをデザインイメージとした漆器を制作。制作する漆器はオブジェではなく、実用に堪えれる作品とします。

Ostend
材料:ムール貝
デザインイメージ:ナポレオン要塞
Rumst
材料:リュペル粘土
デザインイメージ:粘土パン
Genk
材料:石炭採掘残土
デザインイメージ:採掘クレーン
Spa
材料:スパ湧水
デザインイメージ:ジョリテ・デ・スパ

伝統工芸は地域に根をはるエコロジカルかつ持続可能的創作活動です。しかし伝統を守るがゆえに時代の流れについていけず、衰退を辿る産地の現状もあります。工芸は更なる進化を必要とします。アジアの漆とベルギーの地方性を混ぜ合わせることにより、伝統的漆芸に新たな活力を見出し、「伝統を伝統で打ち破る」必要があると考えました。
工芸品は付加価値であります。漆器が自ら物語を語る作品を作ることで、工芸品に対する付加価値を再認識してもらうことを試みます。 更に、地球環境に負荷を掛けない工芸的モノづくりを推奨します。ベルギーの地方性を取り入れた作品を展開することで、ベルギー国内の多様性・歴史再発見にも寄与できることを願っています。
(ゲント・デザインミュージアムにて卒業作品展示)

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"Relational Design"

ゲント芸術アカデミー(KASK)・プロジェクトリサーチ"Relational Design"用に作ったプロトタイプです。このプロジェクトはプロダクトデザイン科教授Dirk van Gogh氏の指揮の下、持続可能性を目指したモノ作りをデザインします。風呂敷、折り紙、木工の組み手・継ぎ手の3つの要素を取り入れた「分解可能な形」を取り入れ、リサイクルのあり方を考え直します。

分解可能というプロセスの中で、どうせ分解するのならもう1つ機能を追加してみよう、と考えました。家具はおおざっぱに大別すると、箱ものと脚ものになります。この2つの違った要素を取り込み、1つのパッケージにしました。つまり、トランスフォーマーです。

風呂敷にきれいに収まったパーツを組立て、箱にします。風呂敷は蓋に収まるようにしました。これを分解して文机にします。さらに欲を出してデスクにもできます。三徳包丁なみのお得感です。(このプロトタイプには折り紙の要素は含まれていません。)

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