家具:アールヌーヴォー・ミュージックキャビネット ルイ・マジョレル
フランス・ナンシー派の家具デザイナー、Louis Majorelle (1859 – 1926)によるアールヌヴォーキャビネット。天板前面右隅にサインが見られます。
本体はクルミ材で組まれ、限りなく細く削り出された部材に、流れるような彫刻が施されています。タモの泡杢ベニヤを背景に、繊細な花蝶をあしらった象嵌が天板、扉、抽斗、棚、サイドパネルに配されています。右下サイドパネルは象嵌の代わりに、透かし彫りパネルが用いられています。
古く痛み汚れていたシェラック層を剥がし、剥がれたベニヤ・木部の割れなどを再接着しました。象嵌ベニヤを慎重にサンディングし、フレンチポリッシュで仕上げました。
このベニヤを用いた象嵌をマーケトリー(marquetry, marqueterie)と言います。マーケトリーでは様々な樹種のベニヤを組み合わせることで、絵画的・幾何学的な模様を構成することができます。樹種の異なる木目や杢、色味を生かします。時にはベニヤに色付けを施し、自然界では手に入らない色を作り出します。熱く熱した砂の中にベニヤを埋めることでほんのりと焼きを入れ、陰影効果を高めます。ベニヤ以外にもべっ甲、貝類、牙角類、貴金属なども装飾として併用し象嵌されます。特にべっ甲と貴金属を組み合わせた象嵌をAndré Charles Boulleにちなんでブル・マーケトリーと言います。
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